土地家屋調査士試験 口述試験体験記
筆記試験に合格した者には当然ながら口述試験の案内が送られてきます。
私の場合は成績通知よりも一日遅れで届きました。
封書に試験会場の案内図と受験票が封入されていました。
受験票は筆記試験と同様のハガキによるものですが、受験番号は口述試験専用のもので、筆記試験とは異なります。
口述試験当日朝の渋谷駅前→
私の試験会場は渋谷のフォーラム・エイトという貸しビル内のレンタル会議場の様な場所で行われました。この会場は毎年、東京圏の口述試験会場として定番であり、司法書士の口述試験もこちらで行われているそうです。
時間は午前と午後にわかれて行われるのですが、私は午前に指定されました。
午前は8時40分集合・9時10分開始。午後は13時集合13時30分開始です。
できれば、朝早い午前よりもゆっくりできる午後が良かったのですが、自分で選ぶこともできないので仕方ありません。
遅刻だけは絶対に出来ないので7時半には渋谷駅に到着するよう計算して朝、家を出ました。
渋谷駅に到着したのは予定通り7時半少し前だったと思います。駅から会場までは徒歩で10分程なので、取りあえず会場の場所をチェックすることにしました。
いつもは大勢の人で埋め尽くされている駅前のスクランブル交差点もまだ時間が早いせいか、人はまばらでした。
会場は道玄坂沿いの駅からは少し離れた場所にあります。自分は以前、仕事で渋谷にはよく来ていたので、土地勘が多少あり、迷うことは有りませんでした。
会場のビルの前には「土地家屋調査士試験口述試験会場」のホワイトボードが掲示されていました。
すでに受験生と思われる人も数名いましたが、この時点でまだ8時前。さすがに30分以上ここで待たされるのはキツイだろうと思い、近くのコーヒーショップで時間をつぶすことにしました。
コーヒーを飲んで多少はリラックスしたものの緊張感はかなりありました。「不合格者はいない」、「普通にやれば合格出来るんだ」そう頭ではわかっているものの、やはり緊張はなかなかとれませんでした。
実際に会場に入ったのは8時20分ごろだったと思います。既に20人程が待合室で列を作っていました。
待合室では全受験生が箱のクジを引きクジで決められた番号順に席にすわり、順番がきた人から別室の試験会場に呼ばれる仕組みです。
(ただこのクジは実は箱の中で混ざっていないので実質先着順なのではないかとの噂もあります)
番号順に呼ばれるといっても一人一人ではなく、8人1組ずつ位の組に分かれており、その組ごとに時間通り呼ばれるようになっています。
私は運よく3番目の組になり、それ程待たず試験を受けることが出来ましたが、後の方の組の場合は、12時くらいまで待たされることになってしまいます。
8時半位から試験監督の方が受験についての注意事項などを延々と説明始めます。
その間はトイレ等の退室は自由にして構いません。実際に1組目の試験が開始された9時10分以降の退出は筆記試験同様に挙手の上、試験監督が付き添いで行く必要がありました。
自分の順番が来るまでは受験生はほとんど雑談などはせず、持参した予備校の対策資料等に目を通している人が多かったです。
私も東京法経学院から配布された口述試験受験対策資料の冊子を読んでいました。まぁ読んでいたというより、眺めていたといった方が正確かもしれません。
そうこうしている内に自分の番がきました。試験監督に誘導され、会場の前の椅子に着席して自分の番が来るのを待ちます。(このときは自分の前の順番の受験生が実際に中の部屋で試験を受けています。)
待つこと五分ほどで前の受験生の方が退出して、その後さらに2,3分後にドアが開き「では、どうぞ」と呼ばれます。いよいよ口述試験の本番が始まりました。
会場内は広さは10畳ほどでしょうか。前方に長机が一つ置かれていて、そちらに試験管が2名座っています。
自分は手前の一人掛けの椅子に座るよう促されて、着席しました。
その間は2メートルくらいでしょうか。
以下は思いだせる範囲で質問と自分の解答を記載します。
恐らく思いだせず、記載していない問題や多少、言い回しが異なるものもありますが、出来る限り再現はしたつもりです。
試験官A「まず、お名前と受験番号をお願いします」
私「○○○と申します。受験番号は××××です。」
試験官A「では、まず土地家屋調査士法1条を述べてください」
私「調査士業務の…、調査士業務の…、業務の…」
※この質問は絶対問われるであろうと予想していたものであり、ついさっきまで楽に暗唱することが出来ていたはずだ。自分でも訊かれた瞬間は「もらった!」と思っていました。しかし!実際に口にしてみると頭が真っ白になり、答えが出てきませんでした!
(やばい。。。なぜだ。。。このまま答えられずに不合格にになるのでは?!)
正解は「調査士業務の適正を図ることにより、不動産の表示に関する登記手続きの円滑な実施に資し〜」なのであるが、「適正を図る」の言葉がすっかりでなくなっていました。
試験官B「全部ではなくて構いませんよ」
私「(助かった)不動産の表示に関する登記手続きの円滑な実施に資し、不動産に係る国民の権利の明確化に寄与することを目的とします」(ホッ)
試験官A「ではつづきまして調査士法2条は」
私「常に品位を保持し、業務に関する法令実務に精通して、公正誠実に業務を行う必要があります」
試験官A「それはなぜですか?」
私「調査士の業務は、極めて専門的な知識と技能が必要だからです」
試験官A「それだけですか?」
私「???(答えが出てこない)」
試験官B「社会にとってどういう業務なんでしょうね?」
私「調査士の業務は公共的な業務だからです!」
試験官A「ずいぶん緊張しているみたいですが大丈夫?」
私「え、はい。大丈夫です(余計緊張するわ!)」
試験官A「では、調査士の業務をいくつか言ってください」
私「え〜、土地や家屋に関する調査、測量と登記の申請です。あとは、審査請求の代理です」
試験官A「他にはありませんか?」
私「え〜と……(もう、いくつか言ったでしょうが(汗))」
試験管B「測量や調査の手続をするだけでしょうか?」
私「それらの相談です!」
試験官A「…そうですね」
※私がいくつの業務内容を答えられたか数えて何かに記載しているようでした
試験官A「では、試験に合格した後、実際に調査士になるにはどのような手続きが必要ですか?」
私「事務所を設ける所の管轄の法務局の管轄内の調査士会を経由して調査士会連合会に申請をします」
試験官A「では、調査士の懲戒処分の種類を3つ言ってください」
私「戒告、2年以内の業務の停止、業務の禁止です」
※今回の口述試験の中で一番自信を持って答えられました。
試験官A「では、業務の禁止になった調査士はどうなりますか?」
私「…調査士ではなくなりますので、調査士の業務はできなくなります。」
※これはかなり自信がない
試験官A「…その場合、再度調査士の業務を行うためにはどうすればいいのですか?」
私「再度、調査士会を経由して連合会に登録の申請を行う必要があります」
試験官A「う〜ん(私の回答にいまひとつ納得していない様子)」
試験官A「まぁいいでしょう。では調査士が守らなくてはいけないことを3つ言ってください」
私「事務所を複数設けてはいけないこと。正当な理由なく依頼を拒んではいけないこと。…え〜、え〜と、調査士としての品位を守らなくてはいけないこと…?」
試験官A「・・・」
私「…え〜と」
試験官B「業務の依頼を得るためにはどのような方法を使ってもいいのですか?」
私「ダメです!不当な方法で依頼を誘致してはいけません(ありがとう試験官B!!)」
試験官A「そうですね。それはなぜですか?」
私「えー、調査士の業務は極めて専門的な知識と技能を必要とする公共的な業務だからです(あれ?さっきも同じ答えを言ったような。。。)」
試験官A「わかりました。では不動産登記法についての質問に移ります」
私「(ホッ。これで調査士法から解放される)」
試験官A「登記所に備え付けられている地図についてお訊きします。地図と地図に準ずる図面の違いはなんですか?」
私「(いきなり地図についてか!?)え…地図には現地の筆界を復元する能力は有りますが、地図に準ずる図面はその能力がありません」
試験官A「では地図に準ずる図面にはどういう役割があるのですか?」
私「え〜え〜(全く答えが思いつかない)」
試験官A・B「・・・」
私「えーとですね。。。(汗)」
試験官B「地図に準ずる図面を見るとその土地の何かが分かるんじゃない?」
私「えーと、土地の形がわかります・・・(消え入りそうな声)」
試験官B「形が分かると他の土地のとの関係はどうなんですか?」
私「…え〜位置が分かると思います(ますます消え入りそうな声)」
試験官B「相対的な土地の位置関係が分かるのではないですか?」
私「(え、そうなのか?)はい。わかります。」
※ほとんど試験官Bに誘導して頂き答えにたどり着いたような状態でした。
試験官A「では、地図に誤りがあった場合はどうすればいいのですか?」
私「(まだ地図ですか…?)…地図訂正の申出をします」
試験官A「その申出は誰がすることができますか?」
私「(かなり混乱)…誰でも出来ます」
試験官A「えっ?」
私「(しまった!!)」
試験官B「それなら○○さん(私のこと)の所有する土地の地図の訂正を私がしてもいいのですか?」
私「いいえっ。所有者または所有権の登記名義人です」
試験官A「では、建物について質問です。階段室やエレベーター室は床面積に算入しますか?」
私「はい。します。」
試験官A「合体による登記は誰から申請することが出来ますか?」
私「表題部所有者または所有権の登記名義人です」
試験官A「その建物が共有の場合は共有者の一人から単独で申請することはできますか?」
私「はい。できます。」
試験官A「なぜですか?」
私「合体の登記は建物の物理的現況の変更を報告するための報告的登記だからです」
試験官A「ではオンライン申請について訊きます。オンライン申請はどのような方法で申請しますか?」
私「パソコン等を利用して電子上で作成した申請書をオンライン上で申請する方法です」
試験官A「添付書類はどうするのですか?」
私「本来は添付書類も電子上で作成する必要があるのですが、特例で申請書とは別に法務局へ郵送することもできます」
試験官A「郵送だけ?」
私「・・・」
試験官A「郵送だけではなく法務局へ持参してもいいのでしょう?」
※この辺りになると時間もなくなってきたのか、試験官も深く追求するのを止めたようでした。
私「そ、そうです。」
試験官A「申請書は申請人または申請代理人の電子署名が必要でしょ。○○さん(私のこと)は実務経験はあるのですか?」
私「いいえ、ほとんどありません」
試験官A「今後、合格されたらどこかの事務所に入ってみると分かりますよ。では、最後に…」
私「(やっと最後だ)」
試験官A「土地の地目変更は共有者の一人から申請できますか?」
私「で、できます」
※最後には今後の心構え的な質問が来ると予想していたので、このタイミングで地目変更について訊かれて、肩すかしを食らいましたが取りあえず答えました。
試験官A「以上になります。お疲れさまでした」
試験官B「お疲れさまでした」
私「ありがとうございました」
一礼して退出しました。退出すると試験監督に誘導されエレベータに乗せられ、そのまま会場を後にすることになります。
元の待合室には戻ることはできません。会場のビルからでると時間は11時を少し回ったところでした。これで、ようやくすべて終わったと思いましたが、なぜか解放感や嬉しい気持ちはあまり感じませんでした。
実際に試験を受けていた時間は15分弱位だと思いますが、緊張して必死だったせいか、あっという間に感じました。
質問の内容はほとんど東京法経学院から配布された資料に乗っていたとおりだったので、それほど難問と感じることはありませんでしたが、やはり緊張しているせいか思うように言葉が出てきません。ただ終わってから思うことは、たとえ回答が多少言葉が足りなくても、質問の主旨を大きく外さなければ試験官も理解してくれるということです。
もちろん、条文どおりに答えられれば、それに越したことはありませんが、あくまで暗記テストではなく口述試験なので自分の言葉で話しても良いと思います。
また、不動産登記法については筆記試験をクリアした方であれば、それなりに回答することが出来るかと思いますが、調査士法については少なくとも1条、2条と罰則と登録については十分覚えていく方が良いのではないでしょうか。
恐らく全ての質問に「わかりません」と答えても不合格にはならないのかもしれませんが、かなり辛い15分間になることは間違いありません。
その為、時間がない方は調査士法だけでも答えられるようにすれば、かなり楽になると思います。
口述試験の対策としては東京法経学院の口述試験受験対策資料を入手することに尽きますね。
この中の「口述試験問題データベース」に過去問われた質問のほとんどが掲載されていますので、これを2、3度目を通すだけで問題なく試験に挑めると思います。
また、実際に試験を終えてみると、いかに東京法経学院の資料が的確なものであるかが実感できるはずです。
ただ恐らく何も対策しなくても遅刻・欠席さえしなければ、
不合格になることはないと思いますが。
- 絶対に遅刻しないよう、かなり早めに会場に着くようにする
- 身なりはほとんど全員スーツにネクタイを着用である
- キレイに答えようとせずに自分の言葉で良いから何か答える
- 東京法経学院の口述試験受験対策資料をよく確認する
- 不合格になる奴はいないと開き直る